海底に存在する急峻な窪みや、閉鎖的な内湾では、夏季に水温躍層が発生しやすく、表層と
底層の海水の密度差が大きくなります。底層では植物プランクトンの死骸などの有機物が
堆積し、それらを微生物が分解することで、海底付近には極めて溶存酸素量の少ない
貧酸素水塊が形成され、この影響で魚類や底生生物は窒息死し、場合よっては、
嫌気性細菌の分解により発生した硫化水素で大量死することがあります。
これら水質環境を改善すべく、海域に合せた環境改善手法や製品をご提案いたします。
水温(密度)躍層の緩和
攪拌ブロックは、前後に撹拌を促すための面板を設けており、前方上部の面板はカルマン渦の形成、
後方下部の面板は構造物内部の流れを上部に押し上げる役割になっています。この2種類の面板が起こす
流れの変化により、大きな渦流と反流域が形成され、構造物後方の鉛直混合を促進します。
流速の分布図からも、後方には水面付近まで撹拌される様子、海底付近に反流域が形成される様子が
確認できます。
窒素・リンの同化
今般、大阪府「豊かな大阪湾」環境改善モデル事業にアルガーベイARW-C(Reef)型が採択され、浜寺水路の
緩傾斜護岸に人工藻場および環境配慮・生物共生型構造物を設置します。大阪湾奥などの閉鎖海域では、
外海との海水交換が上手く行われず、排水などで流れ込んだ窒素、リンが滞留しやすくなるため、それらを
栄養源とする植物プランクトンの異常増殖を発端に、赤潮、貧酸素水塊、硫化水素の発生といった様々な
水質汚濁を引き起こします。窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)は植物の生育に必要な3大栄養素として、
藻場の創出にも重要な役割を担っており、人工藻場造成は、植物プランクトンの異常増殖を抑制する有効な対策となります。
今回の実験は、ホンダワラ類を利用した人工藻場の造成を目的としており、大型海藻の生長による効果的な
窒素、リンの同化に期待されます。その手法として、湾奥の緩傾斜護岸上に、弊社が提案するアルガーベイと、
ホンダワラ類の母藻を設置することで、ホンダワラ類の幼胚(卵)が沈着しやすい環境を作り、水質悪化が
顕著な夏から秋にかけて、ホンダワラ類の生育を促します。また、副次的効果として、藻場を生息場とする
魚類の産卵場や幼稚仔魚の育成場として機能することで、大阪湾全体の生産力の向上にも繋がると考えています。